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ニュース (機関紙) 案内

第8号 2010年11月

軽 度 外 傷 性 脳 損 傷
(mild TBI)友の会 会報
 
第8号 2010年11月
〒136-0071 江東区亀戸 7-10-1 Zビル5F
 電話 03-3685-2617 , FAX 03-3683-9766
 E-mail info@mild-tbi.net
 URL http://www.mild-tbi.net
2003年障害等級認定基準によって、被災者切捨て
 労災と交通事故の障害基準(精神・神経系統の障害等級認定基準)は、厚生労働省・労働基準局の通達です(法律や政省令ではありません!)。同省は、軽度外傷性脳損傷(MTBI)を否定していないと言い訳していますが、表のように友の会の会員が切り捨てられています。

外傷性脳損傷の事案 切り捨てられた中味
(1)
北海道・労災再発裁判
白浜裁判
労働局医の検査がずさんなのに、それを採用
(2)
山梨・労災障害裁判
臼井裁判
韮崎・ワイナリー ――画像に見えないから切られた。
(3)
東京・労災再発裁判 画像に見えないから切られた。膀胱障害との関係も否定
(4)
東京・労災障害裁判 審査官が、画像に見えないから評価しないと。
(5)
東京・労災障害再審査(棄却) 画像所見ないから脳損傷でなく、神経因性膀胱の原因は脳損傷でない。画像所見がないから14級(監督署)
(6)
東京・労災障害再審査(棄却) 画像に見えないから切られた。膀胱障害との関係も否定
(7)
神奈川・労災再発再審査(審理待ち) 画像所見なし。就労による症状悪化
(8)
神奈川・労災審査(原処分取消) 画像所見なしとして否定されたが、審査請求で認定
(9)
東京・労災障害請求 治癒後の正確な診断書を不受理
 MTBIは欧米の医学的知見を踏まえ、WHOによって2004年にその診断基準が定められており(診断できなければ、障害も認定できない)、それから6年もたっており、いまさら疾患概念をどうこういう時ではありません。今やるべきことは、画像に見えない外傷性脳損傷・脊髄損傷の存在は共通認識ですから、それらによって労務困難な場合の障害等級(7級以上)を新設することであり、また「正しい原因の究明」(労災の理論と実際)に沿って、労災再発を認めることです。これらはいずれも通達の改正によってできますが、障害基準(通達)策定のために、ちゃんと症例を診ており、国際的な知見にも明るい人選による専門検討会をすぐ(!!)開催すべきです。
 そのために、友の会は超党派で運動を進めています。この間、民主党の谷博之・輿石東両参院議員、岡本みつのり衆院議員、細川厚生労働大臣の石原憲治秘書官、公明党の山本ひろし参院議員、共産党の小池晃参院議員(当時)・塩川てつや衆院議員に陳情しています。
 下記の日程ですので、体調をみながら、ぜひよろしくお願いします。
 12月2日(木)11−12時 臼井裁判(国が被告)・本人尋問
   東京地裁(地下鉄霞ヶ関駅A1出口)5F527号法廷
   山場です。望月弁護士
 12月15日(水)10時(短時間)白浜裁判(国が被告)弁論
   東京地裁6F606号法廷
   石橋先生が、北海道局医らを論破! 湯川弁護士
 
2011年1月14日(金)13時(短時間)中田裁判(国が被告)弁論
   東京地裁6F619号法廷――労災時効などの争い 望月弁護士
 
1月21日(金)13〜16時 友の会・例会―ひまわり診療所・友の会4F会議室
- 1 -
労災審査請求で、軽度外傷性脳損傷を認める
 訪問看護師の労災交通事故による、軽度外傷性脳損傷(MTBI=mild Traumatic Brain Injury)について、横浜南労働基準監督署は因果関係を否定し、労災申請に対しゼロ回答だったが(2008年10月)、穴見功・主任・神奈川労災審査官(労働者災害補償保険審査官)は監督署の処分を取り消し、因果関係を認める決定をした(2010年7月22日 斎藤が、代理人)。
 MTBIは、WHOが各国に予防を呼びかけている中枢神経系の損傷で、その病態は「びまん性軸索損傷」(頭部に対する回転加速度衝撃により、神経細胞・軸索の顕微鏡的な損傷が、多発性・散在性に起きる)である。
 長年、むちうち損傷・頸部捻挫と誤診されていても、正しい原因の究明・しかるべき神経診断学の検査により、あとからMTBIと診断されることがあるので、転落・転倒・交通事故などによる後遺症にくるしむかたがいれば、診断の見直しが必要だ。
 決定書から、抜粋する。
第2 判断
1 判断の要件
災害と傷病との因果関係について
 請求人の主張は、交通事故(通勤途上の災害)が原因で外傷性脳損傷、高次脳機能障害を発症したというものであるので、請求人の傷病が交通事故によって発症したものであるか否か、傷病と災害との因果関係について検討することとなる。
 傷病が災害によるものと認められるためには、傷病の発症と災害との間に条件関係が認められるだけでは足りず、医学上の相当因果関係が認められることが必要であり、請求人が原因であると申し立てている、2004年・・・の交通事故で頭部をいためたという事実の有無及びその出来事から症状の出現までの経過や傷病の状態等が医学上妥当なものであるか否かによって判断することとなる。(後略)
2 (2)結論
(ア)
関東労災病院I(茂野)医師臼井裁判の国側医師は、「脳画像所見は、異常を認めない。」として「画像診断上は高次脳機能障害は否定される。」との所見であるが、ひまわり診療所で診察に当たった湖南病院石橋徹医師は、「神経眼科、神経耳科、神経泌尿器科、リハビリテーション科の神経学的検査の結果」、「請求人は上記の交通事故で軽度外傷性脳損傷にかかられたと診断した」との所見である。また、同医師は脳損傷による障害の状態に関する意見書において「MRI等に異常を認めず」としている。
(イ)
北里大学病院脳神経外科K医師鑑定医は、「傷病名に関しては、画像上は明らかな異常所見をとらえられないが、受傷後より初めて高次脳機能障害等出現しており、頭部外傷後遺症とするのが妥当と考える。」、「交通事故と傷病の関係は、事故前問題なく訪問看護の仕事を行えていたことより、因果関係ありと考える。」と鑑定している。
(ウ)
以上のとおり、請求人の傷病名については石橋医師は「外傷性脳損傷」、K医師は「頭部外傷後遺症」としており、傷病名は異なるものの、両医師とも画像上明らかな異常所見は認めないが、神経学的検査等の結果、本件事故によって高次脳機能障害になったものであると所見している。
 
したがって、請求人は本件事故のため高次脳機能障害になったものと認められる。
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軽度外傷性脳損傷:交通事故後遺症、初の認定
 2000万円賠償命令−−東京高裁
 ◇患者救済へ幅広げる
 交通事故により脳に特異な損傷を負う軽度外傷性脳損傷(MTBI)になったかどうかが争われた訴訟の控訴審判決で、東京高裁が「脳に損傷を負った」と認めていたことが分かった。MRI(磁気共鳴画像化装置)の所見がないことなどから従来は否定されてきたケースで、1審もむち打ち症と認定していた。患者団体によると、MTBIを事実上認めた初の司法判断という。【宍戸護】

 訴えていたのは東京都世田谷区の無職、五十嵐克典さん(38)。代理人の菊地真治弁護士は「交通事故による脳損傷の認定条件の変更を促す画期的な判決」と評価している。
 9日の高裁判決によると、五十嵐さんは埼玉県内の東北自動車道で03年10月、渋滞停車中にワゴン車に追突され▽両手の握力がほとんどない▽においが分からない▽道に迷う▽寒暖が分からない▽頻尿−−といった症状が残った。事故の衝撃で脳の情報伝達を担う神経線維が所々切れた「軸索損傷」を負ったとしてワゴン車の男性側に約1億5000万円の賠償を求めていた。
 同種訴訟では従来(1)事故直後の意識障害(2)脳損傷を示す画像所見(3)受傷直後からの症状−−がそろった場合に脳損傷と認められてきた。だが高裁判決で原田敏章裁判長は、五十嵐さん側の医師意見書を基に「MTBIでは症状が遅れて出ることもあり、脳損傷の画像も必ず見られるわけではない」と指摘。(1)〜(3)は満たしていないが、後遺症に関し「事故以外の原因は考えられず、脳が損傷した事実は否定できない」と結論付けた。
 (1)〜(3)を欠くことから1審東京地裁は2月、男性側主張に沿って脳損傷を否定、自賠責の後遺障害等級を14級程度と低く認定し賠償額を約530万円にとどめた。高裁は9級に引き上げ約2000万円の支払いを命じた。
 
五十嵐さん側は賠償額を不満として上告を検討する方針。男性側は取材に対し「判決内容を検討しておりコメントは差し控えたい」と書面で回答した。

◇同様提訴の男性「希望が見えた」
 原告の五十嵐さんは判決について「事実上の病気認定。全国で同じ病気に苦しむ人の励みになれば」と喜び、同様の訴訟を抱える患者からは希望の声が上がった。
 MTBIは認知度が低く、五十嵐さんは事故後、心ない医者の対応に不快な思いもした。ある医者はMRIで画像異常がないと伝えた後、「心が弱っているから、精神科の先生にでもみてもらったら」と勧めた。精神科に行くと「うつ病」と診断されて、薬を出すだけだったという。
 現在は食べ物がのどをうまく通らない障害が悪化し、最近はゼリー状の栄養剤が手放せない。判決での自賠責後遺障害等級が9級だったことに対しては「あまりに低く見られている。正直不満が残る」と話した。
 東京都板橋区の元タクシー運転手の男性(39)は03〜05年に3回交通事故に遭い、頭から首にかけての激痛で休業。補償は07年夏に打ち切られて、年明けから生活保護を受けている。高次脳機能障害などの症状があり、事故相手に損害賠償を求める訴訟を起こしている。男性は「今回の判決で少しだけ希望が見えた」と喜んだ。
 ■解説
◇MRI異常なし、複数の診断重視
 脳損傷の障害認定に求められた条件に当てはまらなくてもMTBIを事実上認めた東京高裁判決は、推定数十万人とされる患者救済の幅を広げ、各地の同種訴訟や労災認定にも影響を与えることになりそうだ。
 判決は、湖南病院(茨城県下妻市)の石橋徹医師(整形外科)が書いた原告側の医学的意見書を重視。画像異常がなくても、複数の専門医と連携し丹念に診断を積み重ねる手法の正当性を認めた。これに対し、自賠責保険の認定基準(高次脳機能障害)に沿った被告側の医学的意見書は「採用できない」と一蹴(いっしゅう)した。
 MTBIを巡っては、国内ではようやく診断ガイドライン作成に向けた動きが出てきた段階だ。原田敏章裁判長は「世界保健機関(WHO)が定めたMTBIに該当するかどうかを確定することが必要なわけではない」とMTBIとの断定を避けたが、患者団体「軽度外傷性脳損傷友の会」の斎藤洋太郎事務局長は「病名認定の名より、病気自体を認めてくれた実をとりたい」と評価している。
 ■ことば ◇軽度外傷性脳損傷(MTBI)
頭部に物理的な力が加わって起きた、急性の脳損傷を外傷性脳損傷(TBI)と呼ぶ。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されるが、国内では軽度の概念がない。欧米では7〜9割が軽度とされ、そのうちの1割が慢性化するとされる。世界保健機関(WHO)は、受傷後に意識混濁または見当識障害などの要件を示している。
毎日新聞 2010年9月12日 東京朝刊
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中部整災誌 2010;53;749-750
軽度外傷性脳損傷の疾患概念
― 静かなる流行病 ―
石  橋    徹 1)
 MTBIの定義:軽度外傷性脳損傷 mild traumatic brain injury(MTBI)は,過去において様々な定義が使われて来た.そこで,WHOのタスク・フォースは,2004年,過去22年間のMTBIに関連する文献 38806件を検討して,MTBIに関する118貢に及ぶ長大な学術論文をまとめ,その中でMTBIのWHO定義を提唱した.WHOは,受傷時の意識障害の概念についてはアメリカ・リハビリテーション医学会(ACRM)の定義(1993年)を継承して,意識喪失がなくとも,頭がボーッとするといった,いわゆる意識の変容と呼ばれる精神状態に陥った場合でも,MTBIが起るとした.さらに,WHOは,受傷後30分の意識障害の重症度をグラスゴー昏睡尺度で13点から15点と定めた(表1).なお,外傷性脳損傷は,グラスゴー昏睡尺度により,軽度,中等度,重度に分類される.そして,頭部外傷の転帰はグラスゴー転帰尺度で評価される.
 TBIの発生頻度と予後:WHO報告(2007年)によれば,TBIの10万人当たりの発生頻度は,150人〜300人と高い.TBIの全世界の罷患者数は,毎年1000万人に上る.その内,MTBIは,TBIの9割を占める.MTBIは,ほとんどが,数カ月から1年で回復するが,MTBIの1割前後の患者は回復することがなく,一生涯,後遺障害に苦しむ.
 MTBIの臨床症状:日本では,TBIの後遺障害は,主に高次脳機能障害から論じられてきたが,このような偏ったアプローチでは,多彩な臨床症状を呈するMTBIの全体像が見失われやすい.MTBIの臨床症状は,実に多彩である.痙攣,てんかん発作,高次脳機能障害,脳神経麻痺,四肢の運動・知覚麻痺,小脳症状,神経因性膀胱,自律神経障害,うつやPTSDなどが現れる.このために,神経眼科,神経耳科,神経泌尿器科,リハビリテーション科,精神科の学際的なアプローチが欠かせない.
表1
軽度外傷性脳損傷の診断基準 −WHO−

MildTBIとは,外部から物理的な力が作用して頭部に機械的なエネルギーが負荷された結果起きた急性の脳損傷である.
第一要件:受傷後に混迷または見当敵陣害,30分以内の意織喪失,24時間未満の外傷後健忘症,または(and/or)これら以外の短時間の神経学的異常,たとえば局所徴侯,痙攣,外科的治療を必要としない頭蓋内痍患等が少なくともひとつ存在することである.
第二要件:外傷後30分後,ないしは後刻医療機関受診時のGIasgow Coma Scale Score(GCS)の評価が13点から15点に該当することである.
除外項目:1.薬,アルコール,処方薬 2.他の外傷または他の外傷の治療(たとえば全身外傷,顔面外傷,挿管)3.心的外傷,言語の障壁,同時に存在する疾病 4.穿孔性性頭蓋脳外傷
  軽度外傷性脳損傷 mildTBI:GCS13〜15
  中等度外侭性脳損傷 moderateTBI:GCS9・−1Z
  重度外侍性脳損傷 severe TBI:GCS3〜8

 MTBIの病態:MTBIでは,臨床症状の発現が,受傷後数時間から数日間,時に数週間遅れることがある.これは,MTBIにおける軸索損傷の異種混交 heterogeneity と時間的進行 temporalprogression が関係して起こる現象である.
 軸索損傷では,正常な軸索,崩壊する軸索,変性から回復する軸索とが混在して率り,これは異種混交と呼ばれる.
 また軸索損傷は,eventではなく,process と呼ばれ,変性は,時間と共に進行する.そして,各軸索の変性が,量的にも,質的にも,ある一定の閾値に達した時に初めて臨床症状が現れる.
 Mildtraumatic brain injry−Silentepidemic−:Toru ISHIBASHI.(Department of Orthopaedic Surgery ,Medical Corporation Hakuhokai Konan Hospital)
1)医療法人(社)白峰会湖南病院整形外科
Keyword5:Mild traumatic brain injury ,Traumatic axonal injury,World Health Organzation
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 日本では,「脳外傷による高次脳機能障害では,臨床症状が受傷後意識障害から覚醒した時にもっとも重く,その後徐々に回復してくる」との考え方が支配的であるが,この様な症状の推移は,6時間以上の意識喪失を伴うびまん性軸索損傷(Gennarelli分類)に該当したとしても,意識喪失が30分以内,または意識の変容だけのMTBIには該当しない.
 なお,神経病理学の著書は,外傷性軸索損傷における生体反応(病態)とっいて,「損傷された軸索は即時性に断裂することはなく,時間とともに変性が進行して最後に断裂する」と解説している.この著書と同じ論旨の学術論文は他にも多く見られる.
 MTBIの神経画像法:MTBIでは,通常のCT,MLでは画像陰性率が高いことから,現在,DTI,DTT,MRS,fMRI,PET,SPECT等の応用が試みられている.しかし,これらは未だに研究の域を出ず,日常の臨床でMTBIのスクリーニング法となり得る神経画像法はまだ確立されていない.
 これを裏付けるように,アメリカ疾病対策センターCDCは,MTBIの神経画像法に「限界あり」といい(2003年),WHOは,「今後の課題である」と述べている(2004年).10万件を超えるMTBIの学術論文も,神経画像法のこれからの展望を語ると同時に,その限界を指摘している.
 そんな中で,厚生労働省は,2003年8月8日(平成15年),労災補償基準を改正し,脳損傷による高次脳機能障害と身体性機能障害のいずれの症状も,前者の一部を除き,基本的には脳の器質的病変に基づくものとして,CT,MRl画像が陽性であることを障害認定の前提条件と定めた.この厚生労働省の通達は,すでに述べた世界の学問的水準と異なる見解であることから,CT,MRI画像陰性の多くのMTBI患者は,各科の専門医により脳損傷に由来する多彩な臨床症状の存在が客観的な検査で確認されているにも拘らず,画像陰性を理由に脳の器質的病変とは認定されずに,心の病扱いされている.
 MTBIを取り巻く日本の現状:MTBIを取り巻く日本の現状は,世界の学問的水準から大きく乖離している.日本では,MTBIの疾患概念がほとんど理解されていない.日本には,独自のMTBIの定義やガイドラインがない.さりとて,WHO基準が採用されているわけでもない.
 その結果,昨年12月までに,日本全国20の都道府県から,私の外来を訪れた162名のMTBIの患者の内,誰一人として,診察を受けた医師からMTBIと診断された患者はいなかった.
 MTBIの海外事情:MTBIは,海外ではよく知られた疾患である.時系列では,次のようになる.
 1993年:MT別定義(アメリカ・リハ学会)
 1996年:「外傷性脳損傷法」(アメリカ)
 1998年:「統一見解声明」(アメリカ国立衛生研究所NIH)
 2002年:EFNSガイドライン(ヨーロッパ神経学学会連盟)
 2003年:MTBIアメリカ連邦議会報告書(CDC)
 2004年:MTBI定義(WHO)
 2007年:TBI報告(WHO)
 WHOは,2007年の報告で,世界の医療関係者に向けて,「外傷性脳損傷という静かな,軽視された流行病に対して全世界的な闘いを組織するように」と撤を飛ばしている.
 WHOは,このままでは10年後の2020年には,MTBIを含むTBIが世界の第3番目の疾患になると予測している.人類の脳が今危機に顔している,これがWHOの現状認識である.
文     献
1)Carroll LJ,Cassidy JD,Holm L,etal.Methodological issues and research recommendations for mildtraumatic brain injury :the WHO collaborating centre task force on mild traumatic brain injury.J Rehabil Med Supp1 2004;43:113−125.
2)Gaetz M.The neurophysiology of brain injury Clin Neurophysio1 2004;115‥4−18.
3)WHO.Neurological disorders:public health challenges.Geneva:WHO Press,2007:164−175.
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厚生労働省における意見交換会
平成22年9月16日15:30〜18:00
出席者: 江浪武志 社会t援護局障害保健福祉部企画課課長補佐
谷貝浩一 国土交通省 自動車交通局保障課企画調整官
川島邦裕 社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課課長補佐
その他3名
当方の主張:
1.
軽度外傷性脳損傷MTBIは、WHO報告、CDCアメリカ連邦議会報告,NIH統一見解報告、ヨーロッパ神痙学会連盟EFNSのガイドラインに見るとおり、世界が注目する文明病であるにも拘らず、日本の医学会、厚生労働省の関心がきわめて稀薄である。
2.
日本の医学界は、過去3年間にわたり、石橋医師が投稿した英文論文、邦文論文合わせて7貸の学術論文の採用を拒絶してきた。8篇目が今年6月にはじめて日本医事新報に採用され、掲載されたにすぎない。本邦の医学会は、脳神経学会も、整形外科学会も、神経外傷学会もMTBI問題を封印して国民に知らせてこなかった。
世界のMTBIに関する学術論文は現在110000件を越えているが、石橋医師の論文は日本人が書いたはじめての臨床報告である。
3.
厚生労働省は平成15年8月8日の労災基準の改正で高次脳機能障害も身体性機能障害も脳の器質的病変に基づくものとして、基本的に「MRI,CT等でその存在が認められるもの」としたが、この通達は、画像所見が陰性であることが多いMTBIには当てはまらない。この通達をみると、厚生労働省ならびに厚生労働省を支えた医師達は、平成15年8月8日当時、MTBIという脳疾患の存在を把握していなかったことは明らかである。
この厚生労働省の通達は、医学会に画像偏重を生み出し、患者を診ずにコンピューター画像ばかりみて診察を終える医師を生み出して来た。さらに、この通達がある限り、画像に出にくいMTBIに対する医師の関心が育ち難い。
4. 昨年来、石橋医師の著作「軽度外傷性脳損傷」の発刊、MTBI患者友の会の発足、各種マスメディアの報道等を通じて、日本にもMTBIの患者が多数潜在していることが判明した。公明党のように、MTBI問題を党のマニフェストのひとつに掲げる政党まで現われている。
5. 厚生労働省は、MTBIに対する欧米の取り組みや本邦におけるMTBI患者の表在化を目の当たりにして、遅々として進まぬ本邦の医学会の意識改革を待つことなく、厚生労働省は、日本国民の保健医療を立案指導する立場から、MTBI問題に対して積極的に独自の対策を打ち出すべき時が来ている。
厚生労働省は、MTBI問題で日本の医学会が変わるのを期待するばかりでなく、まず厚生労働省自らがMTBIに対する正しい認識を形成して、その認識に基づいて行動を起こしてほしい。
6. 平成22年9月9日、東京高裁はMTBIという脳疾患の存在をはじめて認め、MTBIは「重い意識障害がなくとも」起こること、またMTBIは,「画像に写らなくとも」起きており、MTBIの症状は「症状の発現が遅れることがある」ことを認めた。これらのことは日本を除く世界の医学界の常識であるが、東京高裁は、日本の医学会、厚生労働省に先んじて、地裁、高裁における審理を通じて明らかとなったMTBI患者の苦境に理解を示したものである。この度の東京高裁の判決は、法曹界では画期的な判決と捉えられている。
7. 事態は、厚生労働省がMTBI問題を「知らぬ、存ぜぬ」とは言えない状況に立ち至っており、厚生労働省は独自の取り組みを国民の前に示さなければならない局面を迎えている。
8. 石橋医師を受診したMTBI患者は、現在、285名に達する。連日、詳細な神経診断学の実践と専門各科の客観的な検査が続けられており、MTBI分野では世界的にも他の類例をみない研究が今続けられている。
そこから得られた貴重な臨床データは日本の医学会、日本の国民の財産であり、厚生労働省はこれを「JapanReport」としてWHOに報告すべきであり、そのためには、MTBIを厚生労働省の政策研究課題として処遇していただくのが適切と考える。
文責 石橋徹
2010年9月28日
厚生労働省のMTBI省内連絡会・友の会へのヒアリング報告(9/27)・部分
労働基準局の精神・神経障害等級認定基準について、横田業務係長は、
 
画像「等」の中に、神経診断学にもとづく他覚的所見も含まれ、画像に見えないからといって全否定するものではないこと
 軽度外傷性脳損傷という疾病概念を否定するものではないこと
 事故と病気との因果関係が必要であること
を明言されました。
(全体は、ホームページをご参照下さい)
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